勉強しているのに、成績が伸び悩む人は少なくありません。その原因は学習能力ではなく、学習観・方法にあるのかもしれません。今回は、ついやってしまっている、成績が伸びにくくなってしまうことを分野ごとにあげてみました。伸び悩んでいる方は自分に当てはまっていないかをチェックしながら見てみてください。
- 集中できる「いつもの勉強場所」がない
漫画や雑誌などが散乱している状況で勉強すると誘惑が多く集中できません。
これを脳科学的な観点で説明すると、勉強以外の選択肢が目の前に提示されることによって「ウィルパワー」が消耗されていくのです。
ウィルパワーは意志力や集中力の源であり、上限があります。これは選択を行うことで減って行くことがわかっており、片付いていない雑多な部屋で勉強することは無意識のうちにどんどんウィルパワーが減っていってしまうことを意味するのです。 - 心理的安全が保証されていない
心理的安全性とは、職場や家庭など組織の中で、誰に対しても自分の考えや気持ちを安心して伝えられる状態を指します。
家庭における子供の心理的安全性を保障するために特に考慮したいのはこの3点です。
①何時も受け入れてもらえるという安心感
②その場所で尊重されているという実感
③失敗しても良い環境や状況があること
「じりつ(自立・自律)」の力を育んでいる最中の子供であれば、疲れていたり嫌なことがあると、八つ当たりをしたりといった反応を見せることがあります。
しかし子供がこのような姿を見せるのは、自分をさらけ出すことができている証です。調子がいい時だけ周囲の大人の機嫌がいいのではなく、失敗しても受け入れてもらえる。無条件で自分を尊重してもらえる。愛されているという実感を得ることができる。
「家庭というコミュニティが、どんな自分も受け入れてくれる」という安心感。それは子供の、何事にも好奇心をもって挑戦する自信へとつながっていきます。家庭での心理的安全性が保障されていることは、子供の成長に必要不可欠なのです。
心理的安全性が保障されていないと言葉や暴力で心身を傷つけられる。自分の話を無視される機会が多い。頻繁に否定的な言葉をかけられる。失敗を責められる。
このように自分を否定される状況が続くと、子供は徐々に感情をさらけ出すことができなくなっていきます。「自分は受け入れてもらえない」「ありのままの姿を出してはいけない」と学んでいってしまうのです。
すると勉強面においては、何かに積極的に取り組もうとする気持ちが起きにくくなったり、無気力で、モチベーションにも欠けてしまうという傾向が強くなります。心理的安全性が保障されていない状況では、こうしたリスクが生じる可能性があるのです。
ご家庭では、この心理的安全性を保証することを最優先にしてください。学習指導に関しては学校や塾がやるべきことです。 - 勉強の際、スマホを手放せない
これは殆ど全ての人が当てはまるのではないでしょうか?スマホに関してのお話は以前にもブログで取り上げたので、ここでは多くは語りませんが、これはそこに載せたプレジデントオンラインの記事です。
https://president.jp/articles/-/70832
一部引用します。
・人間は、「自分に対して意味のあるメッセージが届いた」という通知音に対して、強く注意を引かれてしまう傾向があり、それが学習効果を大きく減退させてしまうのです。
・短時間勉強しようが、長時間勉強しようが、どちらにしても勉強中にアプリを使っていれば成績は下がっていたのです。
このように、スマホの利用は、中高生にとっては百害あって一利なしです。調べ物もスマホでやることはおすすめしません。本を使うようにしましょう。
電源を切ったとしても、近くにあればどうしても気になりますよね。勉強の際は自分の目に入らない所に置いておくと良いでしょう。 - テストの数日前とテスト期間のみ学習量が増える
定期試験前は、寝る時間を削ってでも勉強時間に充てたい人もいるでしょう。ただ、適切な睡眠時間をとらないと、勉強をしても知識が定着しない事はもうよくご存知のはずです。長時間勉強してもそれらが無駄になってしまっては本末転倒です。
さらに、記憶は繰り返さないと長期記憶になりません。これは、繰り返し行わない勉強の類が受験という当面の目的にとって、全く無駄であるということを意味しています。
私たちは、日々いろいろなものを見たり聞いたり、考えたりしていますが、そのほとんどはしばらくすると忘れてしまいます。記憶には、覚えている時間の長さによって「短期記憶」と「長期記憶」があります。
数十秒から数分間の短い時間しか記憶できない記憶を「短期記憶」、それ以上保たもたれる記憶を「長期記憶」といいます。
短期記憶は一時的に、大脳の奥にある「海馬」に保存されます。海馬は、膨大な情報のうち、重要な情報だけを選んで大脳皮質へと送ります。この移動が行われるのが睡眠中です。睡眠を取らないとこの移動が起きないわけです。
送られた記憶は記憶の種類ごとに異なる部位に送られ、長期記憶となります。
一度保持された記憶は繰り返すことで定着し、何らかの刺激を受けることで思い出すことが可能になります。
記憶は、復習などを繰り返すことで定着するため、一度覚えただけではすぐに忘れてしまいます。高々数日程度の勉強が身につかないのはこのためです。
まずはしっかり睡眠をとって、記憶を脳に定着させましょう。何度も繰り返し覚えることで、脳に大切な情報だと判断させると、記憶に残りやすくなります。
定期テストは、受験勉強の一環として使うのが最も賢い活用法でしょう。まともな現役生は、短く見積もって年間約14日×5回=70日を定期テスト対策に使うことになります。これは年間の学習可能時間の約1/4に当たります(定期テスト対策期間は勉強時間が増えることを考慮)。よって、これを活かさない手はありません。
定期テストをペースメーカーとして、テスト範囲の基礎内容をより深く習得するために勉強するのが良いでしょう。ただし、定期テストはあくまでも、最終的に必要な学力を身につけるための手段として活用するだけであって、目的ではないので入試に不要な教科には必要以上に時間をかけなくてもいいと思います(好きで学ぶのなら勿論それで構いません)。また、テストに出る内容を暗記するだけの「作業」も、最終目的にそぐわないのはすぐにわかるでしょう。 - 睡眠時間を削って勉強している
https://t.co/iTEOKBxUxk
これは、時間を削って勉強しても成績は上がらないという統計的な調査結果です。ちゃんと寝て、ちゃんと勉強している人は成績がいいんです。
このことに関しても、すでにブログの中で何回か触れていますよね。
https://keijukunobeoka.com/%e7%9d%a1%e7%9c%a0%e6%99%82%e9%96%93%e3%81%a8%e5%8b%89%e5%bc%b7/
延岡の高校がパッとしない原因の1つです。無用な課外と課題を強制しているために、生徒達は慢性的な睡眠不足に陥っており、その結果、一生懸命勉強している子たちも成績が上がりにくくなっている。学校が優秀な子たちの足を引っ張っているわけですねー。だから、そういう高校に行っている子たちは、学校とは距離をとって付き合うことです。 - 布団の中でスマホを触る
睡眠時間を確保するということはブログで何度もお話ししているように成績向上に欠かせません。
しかし現代では布団に入ってもスマホをいじる学生が増加しており、中々十分な睡眠が確保されていない状況にあるのです。
スマホの画面から発せられるブルーライトは非常に強いエネルギーを持った可視光線であり、睡眠前に浴びると人間の睡眠を促す脳内物質であるメラトニンの分泌を阻害します。
そのため、スマホに触るのは布団に入る2時間まで(ブルーライトカットのアプリを入れているなら1時間前でもOK)とし、その際に置く場所も決めるなど工夫して質の良い、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。
スマホの扱いに関しては、ご家庭でしっかりとルールを決める事です。これもブログで触れていますので、ご参考までに。
https://keijukunobeoka.com/%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b%e3%81%ae%e5%bd%b1%e9%9f%bf%e3%81%a8%e3%81%9d%e3%81%ae%e5%af%be%e7%ad%96/ - 勉強後、そこまで疲労感がない
それは、脳に負荷のほとんどかからない「作業」の時間が長い可能性が高いです。で、ビックリする人が多いかもしれませんが、覚えたり、問題を解くこと自体はただの「作業」です。
覚えるということが作業であることはご納得頂けるかと思いますが、後者に関しては疑う方もいるでしょう。詳しくいうと、問題を解くというのは、単に頭に入ってるものがどのくらいかを可視化する「作業」であって、スコアが上がるのは、その中でも解けなかったものや別の考え方があるものをどう見直すか、どう解き直すかや、自分が書いた解答がそういえる根拠が明確に説明できるかという「しこう(思考・試行)」の部分なので、例えば問題を解いたあとのそういう時間だけを勉強時間としてカウントしたら、ほぼ毎日ゼロでした…みたいな人は多いです。
しこうすると当然頭をフル回転させることになるので、めちゃくちゃ疲れます。本来はここまでやって「勉強」なんです。
ただ、大体の人はこういう強度でやれていない。だから、たまに僕と一緒に勉強した子なんかは、約2時間程度の勉強で「疲れた」という言葉を発します。日頃そういう強度でやってないから、僕の勉強の強度に合わせて学ぶとそうなるわけです。
こういうことは自分で意識しなければ決してできるようにはなりません。いわば「筋トレ」みたいなもんです。自分に適切に負荷がかかっているか、何を鍛えているかを常に意識しながら勉強することです。
これだけで他とは大きく変われるはずです。
次回は、メンタル・性格編です。