今日は少し実戦的な話をしましょう。

過去問演習は何のためにやるのかということです。定番の

出題傾向分析
時間配分戦略

にくわえて、3つ目の

類推力養成

これが最も大事です。順番に見ていきましょう。

1つ目、その大学ではどんな問題が出題されるか、出題傾向分析のためというのは当然ですね。

大学によって、問題の出題傾向は大きく変わってきます。

例えば英語なら、「文法問題が多いのか」「英作文の有無」「和訳中心か内容一致問題中心か」などです。

ただし、勘違いしてほしくないのは、「傾向はあくまで傾向だ」ということであって、あまり出題されていない分野は学ばなくても良いということではありません。

傾向として今まであまり出されていなかった分野が自分の受験の年にいきなり出題されることも当然ながらあります(実際、僕がそうでした 笑)。

出題傾向の把握は、あくまでも重点的に学習する分野の優先度を決めるために行うという目的でやるのが良いでしょう。

2つ目は、時間配分戦略を立てるためです。これも定番ですね。

試験問題を難しくしている要因の一つが厳しい時間制限です。

特に近年、共通テストなどは2,30年前と比べて分量が圧倒的に増えており、力がそれなりにある学生でも思うように点数が取れないのが実状です。

過去問演習の一つの目的である時間配分戦略は、限られた時間内で最大効率で点数を取り、点数を安定させる(失敗しないようにする)ことです。

大学によって問題数や配点、問題ごとの難易度は変わってきます。

また、各科目や各分野の得手不得手も人によって異なるでしょう。

自分で過去問を解いてみて『各大問にどのくらい時間を割り振るのか』『どこで点数を稼ぐのか』『想定外の時(出題傾向が変化したときなど)はどうするのか』を予め決めておき、実際決めた通りにやれるかどうかを試しておく必要があります。

しかし実はこれが意外に難しかったりする。特に、得意科目に関してはその傾向が強いです。

これはなぜかというと、その科目が得意だという認識があるゆえ、プライドや拘りも強いという心理的効果があるからです。

結果どうなるかというと、計算ミスや難問があって時間配分内に解ききれなかったとしても、戦略を守れず、いつまでもその問題に時間をかけてしまい、後半の問題に全く手がつけられないまま終了時間を迎えてしまうということになってしまいます。

これはあまりにも勿体無い。手がつけられなかった問題が簡単だった場合非常にショックだと思います。

そうならないように、決めた時間配分をキチッと守る練習をしてください。飛ばす練習をしてください。これは意外と勇気がいります。

そして、3つ目。これが最も大事で、類推力養成のためです。

所詮、大学入試試験というのは入学者の選抜試験にすぎません。

受験者に求められるのは大学の講義についていけるための基礎学力の有無であって、決して研究者のように新奇性のあるアイディアを求められてるわけでも、数ヶ月に及ぶ理論理解の忍耐力を求められているわけではありません。

しかも満点を取らなければならないということもなく、6割かそこらの正解ができれば合格がもらえるわけです。

過去問は過去に出題された問題ですので、もう二度と同じ問題が出題されることはありません。

なのになぜ過去問演習が重要なのか。

それは過去の問題からの類推力を育成したいからです。

合格か不合格かの決め手になるのは、過去問の類題を解くことができるかできないかです。

基本的な問題であれば過去問を使わずとも解けます。これは合否を分けないでしょう。

また、初めて見るような、奇抜で難解な問題もそうです。力が十二分にある「本当にわかっている人」の中には問題なく解ける方もいるかもしれませんが、ほとんどの受験生にとってはいわゆる「捨て問」というやつです。

数学でいえば、極端な例で言うと、東工大1993年前期第4問(これに関しては、全員がほぼ0点に近い状態であったため、採点者は「平均点が0点という報告は出来ない。nについての帰納法で証明すると書いたら点数を与えよう」と考えて、30点満点のうち10点を与えた、という逸話があるほどです。)や、東大1998年後期第3問(これも当時完答者はなく、予備校もあまりの難しさに解答速報が出せないという状況だったらしい)がそれに該当するでしょう。

結局、合否を分けるのは過去問と「似た」問題ということになります。この手の問題を解けるようになるには、過去の問題を解いて見直しをするだけでは身につきません。その年の問題が解けるようになるだけです。

重要なのは、何がどう類題になっているか、その構造を正しく分析して、一見異なるようにみえるものもいかに「同じ問題」であると認識できるかにあります。

つまり、問題の本質(ポイント)を見抜き、形は違えど様々な問題が同じに見えるという状態を作っていくことが演習の目的の1つなのです。

そして、その本質というのはそう多くない。

その根っこの部分は何なのか?何を理解していればあらゆる問題に対応できるのかということを考え、見つけ出し、それを体系化していくのが日頃やるべき勉強なのです。

だから、演習と基礎知識の体系化というのは同時にやっていかなければならないわけです。

この着眼点を持っているかいないか、これは入試だけでなく、勉強、スポーツ、仕事などでも共通の基本事項として重要なことです。

以上、過去問演習の目的3つでした。3つ目の話はあまり見かけないので、新たな視点を持ってもらえたと思います。勉強されている方の参考になれば嬉しいです。

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小野桂史
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