これも特に数学のお話になりますが、「基礎が大事」「基礎を固めろ」「基礎力をつけよう」なんてことは日頃からよく言われていると思います。しかし、じゃあそもそも数学の基礎、基礎力とは何か?ということについてはあまり具体的に考えたことがないという方は多いはずです。

今回はこの「基礎力」とは一体何ぞや?ということについてお話してみたいと思います。

まず始めに、よくある誤解を解いておきましょう。基礎力の有無は、教科書レベルの問題が解ける、などの、問題が解ける事とは無関係です。問題が解けるから基礎力があるということにはなりません。

よくいるんですよね、「教科書は大体2,3周くらいしてて、基本問題は解けます(でも基礎はガッタガタ)」みたいな人。こういう「基礎力」のない人の1つの特徴として、模試の点数が安定しない・安定して低いということが挙げられます。ま、みたことあるような問題は何となく解けることもあるんですよね。「確かこんな感じだったな…」みたいなある種のフィーリングというか、記憶頼りというか、そんなふうにして、たまたま。ただ、見たことない問題だと、途端に手も足も出なくなって、結局点数はみたことあるような問題がどれだけ出るかという運ゲーになるわけです。

こういう事になっているのは勿論基礎力がないからですが、では、基礎力とは何か。それは、

言葉や記号の意味(定義)が正確に言え、その概念や性質を日本語で説明したり数式で表現・処理することができる力

の事です。だから、教科書レベルの練習問題なんて基礎力があれば出来て当然なわけで、逆にそれが出来てさえいれば基礎力があると言えるかというと、そうではないことはこれで分かりますね。

基礎力チェックしてみましょうか!高校生の皆さんは三角関数は習ってますよね?では、問題です。

・sinθ、cosθ、tanθを定義し、定義からsin2θ+cos2θ=1が成り立つことを示せ。

どうですか?説明できますか?出来ない人。そもそもsinやcosの言葉の意味すら分かっていないのに、なぜ三角関数の問題を解こうとするのか、僕には理解できないんですが…ちなみに、今まで見てきた高校生で、この定義を初っ端で正確に言えた人は会ったことないです(笑)もう1ついってみましょうか。

・方程式とは何かを説明せよ。
・方程式を解くとはどういうことかを説明せよ。

よく耳にしますよね、「方程式」という言葉は。連立方程式やxの二次方程式は馴染み深いものでしょう。では、そもそも方程式とは何なのか、それを解くとは何をすることなのかを説明できますか?説明出来ない人、自分が何やってるのかすら理解せずに問題解いてるんですか?だいぶ歪ですよね、それって。こういうことをしっかり理解しておくと、例え複雑で難解な問題でも、解答で自分が何をやれば良いかハッキリしてくるし、逆にこういうことが曖昧だと、何やれば良いのか、自分が何やってるのかわかんなくなってくるわけです。

上のお話がパッと言える人は、例えば下のような入試問題でも、何を言えば「解いた」ことになるかがすぐに分かると思います。

・方程式 2x+3x+5x=10 を解け。

とまぁ、こういった根本となる言葉や記号の意味をしっかりと理解し、数式で表現できるようにしておくことは結局、問題において、何をすればよいのかを把握したり、考えるための道筋を得ることにも繋がってくるわけです。なので、細かい頭の使い方の前にまずこれらがものを考えるための土台となるわけで、だからこそ基礎なんです。

従って、言葉の意味やなぜそうなるのかという証明の理解には時間を割かずに、とりあえず問題が解ければいい!みたいな、短絡的で表層的な「勉強してるふり」ばかりしていると、いつまでたっても基礎力はつかず、数学の問題が解けるか解けないかはほぼ運ゲーということになって、結果成績はあまり上がらず、受験期にも伸び悩むという事になるわけです。

数学をどう学ぶか。 – 桂塾-延岡にある志高き中高生のための進学塾

しかし、これを各分野で出来るようにしなければいけないのですから、当然基礎は簡単なのではなく、最も重要で最も時間のかかるものです。多分これもよく誤解されていることの1つであると思っていますが、どうでしょうか?基礎は簡単ではないんです。基礎基本ができるのであれば、間違いなく8割は取れます。模試や高校入試の実力テストでですよ?

基礎基本ができている基準は、最低でも偏差値60以上です。まず、これを切っていると確実に基礎力はないです。偏差値60の子でも基礎ができているのは大体1割。偏差値65の子で基礎ができているのは大体5割。基礎ができていますねと胸を張って言えるのは偏差値68は必要です。ではその偏差値帯が大体上位の何%かというと、偏差値65の生徒は上位7%くらいです。ということは100人いれば7位以内、200人だと14位以内、300人だと21位以内ということになります。その順位であっても半分くらいしか基礎はできていません。偏差値68だと上位3.6%くらいですから、200人いたら8位までということになります。

そのくらい基礎ができるというのは時間もかかるし、難しいということです。偏差値50で平均点ですから、平均点くらいの子たちは基礎ができると言えるまでだいぶ道のりが長いということですね。

こういう自覚を持ってもらいたいわけです。

平均点そこそこで自分は基礎ができると平気な顔で言う生徒がたくさんいます。そして親もうちの子は基礎はできると思うんですと言います。はっきり言って全くできていません。基礎ができているの基準が低すぎます。基礎ができるのであれば、模試やテスト前に焦って対策しなくても80点は取れます。テスト前にちゃんと勉強してその80点を90点以上に仕上げていくわけです。

全ては基礎ができているからできることです。だからこそ、基礎は簡単と言っていないで、基礎こそ何度も何度も繰り返して、息をするかの如くできるようにしておかないと。そこまでしてやっと点数が上がります。数学が得意な子は、これを息を吸うようにやってるわけです。そこまでできていないと、当然点数は低いままです。割と簡単な話なんです。模試やテストの点数が良くないのは基礎ができていないから。そして、基礎力というのはテストや模試の2週間前から勉強したって身につくものではありません。毎日コツコツと、自分に深く、厳しく問いかけながらやり続けるからこそ、基礎が少しずつできるようになります。

投稿者プロフィール

小野桂史
最新の投稿